暖かい日差しと…






キーンコーンカーンコーン♪

一限目の予鈴がなった。
朝練のとき佑志に連れて行かれた聖が授業開始3分前ほどに教室に来た。

「はぁはぁはぁっ・・・間に合ったぁ〜!」
「聖はよ!」
「聖君おはよう!」

聖が教室にやってくるとクラスの人みんなが挨拶してくるので、席に着くまでが長い・・・;
因みに聖の席は窓側の一番後ろ。春の日差しが暖かい絶好の場所だろう。
聖の前の席には龍冴が座っている。

「おかえり。」
「ただいまぁ。・・・ゴメンね〜…;朝練出来なくて;;」
「まぁ、練習しなきゃいけないのはほぼ俺だから良いんだけど…今日の放課後は大丈夫か?というか、結局何のようだったんだ?」
「うん。放課後は大丈夫。用は―――――」

ガララララ・・・

聖が口を開くと先生が入ってきたので、一旦話は中断となった。
一限目は嫌味にも古典購読。
一番眠くなる厄介な授業だった。





放課後。
音楽室にやってきた二人は楽器の準備をし、龍冴は勧誘しに一年の校舎へと向かった。
聖はあさって用の曲の歌を口ずさんでいた。

歌っていると、出入り口のほうから人の気配がして振り向く。
見てみると一年生の男の子がそこには立っていた。

「あの、軽音部ってここですよね?・・・見学がしたいんですけど・・・」
「…!君は…」

聖は覚えていた。
彼が女子に紛れながらも真剣に見ていた男の子だったからだ。

「うん。ここがそうだよ。君、体験入学のとき来てくれたよね?軽音部へようこそっ♪」

聖は愛想良くにっこりとそう言った。

「えっとーっ・・・」
「あっ、オレは木ノ宮 聖。この軽音部の部長。」
「知ってますっ!『Stells』のギタリストですよねっ」

やっぱり『Stells』は誰もが知っているらしい。
むしろ、知らなかったら恥じをかくくらいに一般常識化しているのかもしれない。

「聖〜わりぃ;1人もつれて来れなかった;;・・・って、すでに1人いるじゃん!!」
「龍冴おかえり!この子だよ。体験入学のときに来てた子。」
「はじめましてっ!僕は、南方拓海っていいます。」
「おうっ♪俺は大瀬龍冴だ。…拓海は軽音部とかやってたのか?」

「いえ;小中と陸上をやっていたので;楽器は初めてです。」
「ん〜。運動やってたなら体力あるよねぇ。龍冴…ベース準備室にあったっけ?」
「あー確かあった。とは思うけど…じゃあ、ちょっくら見てくるよっと。」
「あっ;でも、まだ入部は決めてないんですけど;;」
「いいんだ、それでも。一度やってみてそれから決めても良いから。」
「そうそう!何事もやってみないとなっ!!」

二人の勧めに拓海はうなずいた。



「ここをこう押さえるとー」

ドラマーの龍冴はギター・ベースは専門外なので聖が拓海に教えることになった。
途中、龍冴から目で「明後日のやつ練習した方が良いかも」サインが送られてきたので、
聖は拓海に「ちょっとごめん〜」っていって拓海の元を離れた。

「…あわせる?」
「おう!じゃないと俺が不安だ;;」
「んーでもコレ、オレも不安なんだよねーベース無いから…」

作曲した聖でさえ、ベース無しは初めてだったので不安らしい。

「とりあえず合わせてみなきゃわかんねーし…いざとなったら明日直せば間に合う。多分;」
「そうだね。じゃぁ、一回あわせようか。」



今使ってる第一音楽室を使うので拓海には第二音楽室に移動してもらった。
合わせた結果、大丈夫だろうと、このままいく事にした。

「よかった〜大丈夫で」。
「いい加減なれたけど、お前楽器やってるときとやってないときのギャップ激しすぎ」
「そう?」

聖は一種の二重人格ってやつだ。
しかも、二つの顔を自分の意思で変えられるという変わったパターン。
仕事やクラスメイトの前ではStellsのHiziriとしてしっかりした対応をするが、友人の前などで見せる素顔はのほほんマイペースな天然である。
「誰から見てもぜってぇそう!」と龍冴に思いっきり言われた。
第2音楽室に移動してもらった拓海の元に2人で向かう。

「ベース…どう?」

恐る恐る聖は聞いてみた。

「んと;まだ良くはわからないんですが…明日。また来ても良いですか?」
「うん。大歓迎だよー!」
「おう!むしろ、友達も誘って来い!」
「あはははは。そうします。」

気づけば下校時刻が近づいている。
3人は後片付けを済まし、音楽室も後にした。





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あとがき

3話目。ついにベーシスト拓海登場!
気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、
「オレ」って言ってるのが聖で、「俺」って言ってるのが龍冴なんです。



‘06.9.8.(C)Sakuya Hanamai

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